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C++ 継承の練習

C++プログラミングにおいて、継承は非常に重要な概念の一つです。継承を使いこなすことで、コードの再利用性を高め、より効率的で柔軟なプログラムを作成することができます。本記事では、C++初心者の方向けに、継承の基本から応用まで、具体的な練習問題とその解答例を交えながら詳しく解説していきます。これらの練習問題を通じて、継承の概念をしっかりと理解し、実践的なスキルを身につけることができるでしょう。

目次

継承の基本

まずは、継承の基本的な概念と構文を復習しましょう。継承とは、既存のクラス(基底クラスまたは親クラス)の特性を新しいクラス(派生クラスまたは子クラス)に引き継ぐ機能です。

基本的な継承の構文は以下の通りです:

class 派生クラス名 : アクセス指定子 基底クラス名 {
    // 派生クラスの追加メンバ
};

それでは、具体的な練習問題を通じて継承の使い方を学んでいきましょう。

練習問題1: 基本的な継承

問題: 動物を表す基底クラス Animal と、それを継承する Dog クラスを作成してください。Animal クラスには name (名前) と age (年齢) のプロパティ、および makeSound() メソッドを含めてください。Dog クラスでは makeSound() メソッドをオーバーライドし、犬特有の鳴き声を出力するようにしてください。

解答例:

#include <iostream>
#include <string>

class Animal {
protected:
    std::string name;
    int age;

public:
    Animal(const std::string& n, int a) : name(n), age(a) {}

    virtual void makeSound() const {
        std::cout << "動物が鳴いています。" << std::endl;
    }

    void displayInfo() const {
        std::cout << "名前: " << name << ", 年齢: " << age << "歳" << std::endl;
    }
};

class Dog : public Animal {
public:
    Dog(const std::string& n, int a) : Animal(n, a) {}

    void makeSound() const override {
        std::cout << name << "がワンワンと吠えています!" << std::endl;
    }
};

int main() {
    Animal genericAnimal("一般動物", 5);
    Dog myDog("ポチ", 3);

    std::cout << "一般的な動物:" << std::endl;
    genericAnimal.displayInfo();
    genericAnimal.makeSound();

    std::cout << "\n犬:" << std::endl;
    myDog.displayInfo();
    myDog.makeSound();

    return 0;
}

この例では、Animal クラスを基底クラスとし、Dog クラスがそれを継承しています。Dog クラスは Animal クラスのすべての公開メンバを継承し、さらに makeSound() メソッドをオーバーライドして独自の動作を実装しています。

練習問題2: 複数のクラスを使った継承

問題: 形状を表す抽象基底クラス Shape と、それを継承する Circle および Rectangle クラスを作成してください。Shape クラスには純粋仮想関数 calculateArea()displayInfo() を含めてください。各派生クラスでこれらの関数を適切に実装してください。

解答例:

#include <iostream>
#include <vector>
#include <memory>
#include <cmath>

class Shape {
public:
    virtual ~Shape() {}  // 仮想デストラクタ
    virtual double calculateArea() const = 0;  // 純粋仮想関数
    virtual void displayInfo() const = 0;  // 純粋仮想関数
};

class Circle : public Shape {
private:
    double radius;

public:
    Circle(double r) : radius(r) {}

    double calculateArea() const override {
        return M_PI * radius * radius;
    }

    void displayInfo() const override {
        std::cout << "円 - 半径: " << radius << ", 面積: " << calculateArea() << std::endl;
    }
};

class Rectangle : public Shape {
private:
    double width;
    double height;

public:
    Rectangle(double w, double h) : width(w), height(h) {}

    double calculateArea() const override {
        return width * height;
    }

    void displayInfo() const override {
        std::cout << "長方形 - 幅: " << width << ", 高さ: " << height 
                  << ", 面積: " << calculateArea() << std::endl;
    }
};

int main() {
    std::vector<std::unique_ptr<Shape>> shapes;
    shapes.push_back(std::make_unique<Circle>(5.0));
    shapes.push_back(std::make_unique<Rectangle>(4.0, 6.0));

    for (const auto& shape : shapes) {
        shape->displayInfo();
    }

    return 0;
}

この例では、Shape という抽象基底クラスを定義し、CircleRectangle クラスがそれを継承しています。各派生クラスは calculateArea()displayInfo() メソッドを独自に実装しています。main() 関数では、異なる形状オブジェクトを同じ Shape ポインタのベクターで管理し、多態性を活用しています。

練習問題3: 多重継承

問題: Vehicle クラスと ElectronicDevice クラスを作成し、それらを多重継承する ElectricCar クラスを実装してください。各クラスに適切なプロパティとメソッドを追加し、多重継承の特性を示してください。

解答例:

#include <iostream>
#include <string>

class Vehicle {
protected:
    std::string brand;
    int year;

public:
    Vehicle(const std::string& b, int y) : brand(b), year(y) {}

    void move() const {
        std::cout << brand << " " << year << "年モデルが移動しています。" << std::endl;
    }
};

class ElectronicDevice {
protected:
    int batteryCapacity;

public:
    ElectronicDevice(int capacity) : batteryCapacity(capacity) {}

    void chargeBattery() const {
        std::cout << batteryCapacity << "Whのバッテリーを充電しています。" << std::endl;
    }
};

class ElectricCar : public Vehicle, public ElectronicDevice {
private:
    int range;

public:
    ElectricCar(const std::string& b, int y, int capacity, int r)
        : Vehicle(b, y), ElectronicDevice(capacity), range(r) {}

    void displayInfo() const {
        std::cout << brand << " 電気自動車 (" << year << "年モデル)" << std::endl;
        std::cout << "バッテリー容量: " << batteryCapacity << "Wh" << std::endl;
        std::cout << "走行可能距離: " << range << "km" << std::endl;
    }

    void drive() const {
        move();
        std::cout << "静かに走行中..." << std::endl;
    }
};

int main() {
    ElectricCar myCar("Tesla", 2023, 75000, 400);
    myCar.displayInfo();
    myCar.drive();
    myCar.chargeBattery();

    return 0;
}

この例では、ElectricCar クラスが VehicleElectronicDevice の両方を継承しています。これにより、ElectricCar は車両としての特性と電子デバイスとしての特性の両方を持つことができます。

継承の練習におけるポイント

  1. 適切な継承関係の設計:「is-a」関係が成り立つ場合に継承を使用します。
  2. 仮想関数の活用:基底クラスで仮想関数を適切に使用することで、多態性を実現できます。
  3. 抽象クラスと純粋仮想関数:共通のインターフェースを定義する際に有用です。
  4. オーバーライドの明示:override キーワードを使用して、意図的なオーバーライドであることを明示しましょう。
  5. 多重継承の慎重な使用:多重継承は強力ですが、複雑性も増すため、必要な場合にのみ使用しましょう。
  6. コンストラクタとデストラクタの適切な設計:派生クラスでは基底クラスのコンストラクタを適切に呼び出し、必要に応じて仮想デストラクタを使用します。

C++の継承は、効果的に使用することで、コードの再利用性、拡張性、保守性を大幅に向上させることができる強力な機能です。初心者の方は、これらの練習問題を通じて基本的な概念を理解し、徐々により複雑な継承関係やデザインパターンの使用に挑戦していくことをお勧めします。

実際のプロジェクトでは、継承を使用する際にクラス階層の設計を慎重に行い、必要以上に複雑にならないよう注意してください。また、継承だけでなく、コンポジション(構成)やインターフェースの使用など、他のオブジェクト指向設計技法も組み合わせて使用することで、より柔軟で保守性の高いコードを作成できます。

継続的な学習と実践を通じて、オブジェクト指向プログラミングのスキルを向上させ、より洗練されたソフトウェア設計ができるようになることを目指してください。C++プログラミングの奥深さを探求し、複雑な問題解決に挑戦していくことで、より優れたプログラマーへと成長できるでしょう。

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